家賃保証の立退きVS消費者契約法

消費者契約法の勝訴

家賃保証とは(保証会社とは)≫

「連帯保証人」に代わり家賃等の保証のお約束をする事で、入居者は部屋を借りやすく、オーナーは部屋を貸しやすくなる、それが家賃保証(賃貸保証)です。

ほとんどの家主、管理会社は加入を義務付けています。

消費者契約法とは≫


消費者と事業者の間の情報や交渉力の格差を考慮し、消費者を不当な勧誘や契約条項から守るために、消費者契約に関する包括的な民事ルールとして、平成12年(2000年)5月に制定された法律です。

不当に勧誘された契約は取り消しする事が出来たり、消費者の利益を害する契約条項は無効になります。

裁判の内容≫

賃貸住宅で家賃を2か月滞納し、連絡が取れないなど4つの状況になった場合、物件を明け渡したとみなされる家賃保証会社の契約条項は違法だと消費者団体が訴えていた。最高裁は二審の判決を破棄して消費者団体の訴えを認める判決を言い渡しました。

この裁判は、大阪市のNPO法人「消費者支援機構関西」が東京の家賃保証会社「フォーシーズ」を相手取って訴えていたものです。

家賃保証会社は賃貸住宅を借りる人と契約する際、

▼家賃の支払いを2か月怠り
▼連絡が取れず
▼電気や郵便物の状況などから部屋を相当な期間利用していない
▼物件を再び使用しない意思が客観的にわかる、

などの状況があれば、物件を明け渡したとみなし、家具などを運び出せる契約を結んでいました。

消費者団体は、こうした契約が一方的なもので、家賃保証会社から追い出されるトラブルが起きるとして、消費者契約法に違反すると訴えていました。

家賃保証会社側は「一方的に排除する、いわゆる『追い出し条項』とは全く異なるもの」などと主張していました。
一審の大阪地裁は消費者団体の訴えを認めたものの、二審の大阪高裁は契約に合理性を認めて消費者団体の訴えを退けていました。

最高裁の判決≫

最高裁は判決で、「この契約に基づいて建物の明渡しがあったものとみなしたときは、借りた人の建物に対する使用収益権が消滅していないのに賃貸契約の当事者でもない家賃保証会社の一存で使用収益権が制限される」と指摘。

「消費者の利益を一方的に害するものだ」と判断し、二審判決を破棄して、契約書の使用差し止めなどを命じました。

判決を受けた保証会社≫

家賃保証会社フォーシーズのサイトより抜粋【令和4年12月12日】

本日令和4年12月12日、特定非営利活動法人消費者支援機構関西(KC’s)から、弊社(フォーシーズ)が過去に使用していた「住み替えかんたんシステム保証契約書」における保証契約条項(2017年12月1日版。以下「旧版条項」といいます。)の一部について、消費者契約法に違反することを理由として差止め等を求められていた差止請求訴訟について、最高裁判所第一小法廷において、旧版条項の一部の差止め等を命ずる判決(以下「本判決」といいます。)が言い渡されました。

本判決において差止め等が命じられた条項(以下「差止め対象条項」といいます。)の内容は、以下のとおりです。

(13条1項前段)
 フォーシーズは、賃借人が支払を怠った賃料等及び変動費の合計額が賃料3か月分以上に達したときは、無催告にて原賃貸借契約を解除することができるものとする。

(18条2項2号)
 フォーシーズは、賃借人が賃料等の支払を2か月以上怠り、フォーシーズが合理的な手段を尽くしても賃借人本人と連絡がとれない状況の下、電気・ガス・水道の利用状況や郵便物の状況等から本件建物を相当期間利用していないものと認められ、かつ本件建物を再び占有使用しない賃借人の意思が客観的に看取できる事情が存するときは、賃借人が明示的に異議を述べない限り、これをもって本件建物の明渡しがあったものとみなすことができる。

一方、現在、弊社が使用している保証契約条項(2021年4月1日版)においては、差止め対象条項について、本判決以前に、以下のとおり改訂済みとなっております。

(13条1項前段)
 賃借人が支払を怠った賃料等及び変動費の合計額が賃料3か月分以上に達したことなどにより、賃借人に賃料等の支払能力がないことが明らかとなり、原賃貸借契約及び本契約における賃貸人・フォーシーズと賃借人との間の信頼関係が破壊された場合には、フォーシーズは、無催告にて原契約を解除することができるものとする。
(18条2項2号)
 削除

本判決は、将来にわたる差止め対象条項の内容による契約の締結を禁止するとともに、同内容の条項が記載された契約書用紙の廃棄を命ずるものですが、差止め対象条項の内容が記載された旧版条項の契約書用紙は、いずれも回収・廃棄済みとなっております。

フォーシーズ公式サイト

考察≫

不動産屋や家主さんからすれば賃貸保証はありがたい存在ですが、入居者からすれば逆にうっとうしい存在の家賃保証会社。

入居者は自分の家賃を保証するために保証料を払い、滞納すれば延滞金と賃料をきっちり払わされ、滞納が続くと追い出される。

勿論、家賃を払うのは当たり前の話で、遅延損害金は民法上でも認められています。

今回の判決は
・2ヵ月間という短い期間
・家具の持ち出し可とする条項
・支払い能力の確認の仕方
にやや無理があり、保証会社の一方的な見解で消費者契約法に反する事なのでしょう。

家主さんあっての物件で、家主さんも入居者が利用して初めて収益になり、それを斡旋する不動産屋と管理する管理会社、その家賃を保証する保証会社の関係で「賃貸という経済圏」が成立してるのだと考えます。

お互いを尊重し、関係者全員が円滑で有益な経済活動に結び付けられるようになればと思います。

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